シリーズ中心市街地 【6】~【10】

シリーズ中心市街地【6】~【10】イメージ 3
               2019.1.28

 
 今回の「シリーズ中心市街地」は〈その6〉から〈その10〉までを一挙に掲載します。

 レポートしているのは盛岡市普代村、軽米町、葛巻町、そして二戸市です。

 岩手県の県庁所在地・盛岡であろうとも活気が失われつつあるという現実があり、普代村は3,000人いないとても小さな自治体です。

 それぞれのメインストリートはどのような姿をしているのでしょうか?




                +タイトル下の数字はそれぞれの記事をfacebookに掲載した日付け
シリーズ中心市街地-その6*************************
 

 盛岡市中心市街地
  ― 魅力高めにぎわいあふれるまちへ ―

                   2018.12.18

 
 盛岡市の人口は29万3,819人・13万2,246世帯(2018年12月1日現在)。


 盛岡の中心市街地はどこなのでしょうか?
 「第2期中心市街地活性化基本計画」を見ると市は、中心市街地の区域を盛岡駅から東方向に広がる218haとしています。

イメージ 2 土地勘のない人(僕もそうですが)が広さと位置をイメージできるように表現を変えて書いてみます。
 東京ドームの「グラウンド部分」は1万3,000㎡、つまり1.3ha。そして、盛岡の中心市街地は218haです。
  したがって、盛岡市中心市街地は「盛岡駅から東側に広がる東京ドームのグラウンド約168個ぶんの広さをもつ区域」ということになります。

 県庁所在地であり人口が29万人を超える盛岡市でも近年は、景気低迷にともなう商店数の減少や郊外型大型店の相次ぐ出店などで中心市街地の活気が失われつつあるそうです。

 写真は12月16日の盛岡大通商店街、もちろん218haの中にふくまれているところ。周辺もふくめたこのエリア一帯には大型店などもあり県内一の商業集積地になっています。
  大通(おおどおり)・菜園(さいえん)地域が一つになって魅力あるゾーンの形成をめざす「もりおかスクエア」(パルクアベニューカワトク、盛岡大通商店街協同組合、盛岡ショッピング&スクリーン、東大通商業振興会、映画館通り、クロステラス盛岡で構成)はさまざまな事業を展開しています。写真には「歳末夢フェスタ」の緑色のバナーが見えています。



シリーズ中心市街地-その7***********************
 
 青の国の中心市街地
  ― 3000人いない普代村

                  2018.12.19


 今回とり上げるのは岩手県普代村(ふだいむら)の中心市街地。
 
 ―― 普代村では様々な青に会うことができます。遠い空には水色がにじみ、それがグラデーションを描きながら空色イメージ 4になっていきます。その真下には紺色や藍色、群青色、瑠璃色など、ありとあらゆる青色が黒崎やネダリ浜、キラウミやまついそ公園など、村の各地で見ることができるのです・・・・(村の観光ガイドブック)

 村の産業は漁業・水産養殖業が大部分を占めており、観光産業にも力を注いでいる(村勢要覧)という。
 
 久慈市からクルマで国道45号を40分ほど南下し、普代トンネルをくぐる。つづら折りの坂道を下り村の中心部に着いた。

 この村の人口は2,721人・1,149世帯(2018年11月30日現在)。
  12月15日にこのページで小さな村として紹介した野田村(4,255人)よりも少ない。12月18日に紹介した盛岡市(約29万4,000人)とはくらべるべくもない。
 人口は減っていて、たとえば平成13年(9月30日)は3,548人、平成24年(同)に2,995人となり3,000人を下回った。そして現在は約2700人だ。
  
  さて、中心市街地。観光に力を注いでいると言うだけあって観光ガイドブックは「商店&食堂めぐり」の紹介コーナーを4ページ・カラーで組んでいて、地元の海の幸を使った料理や看板メニュー、店主たちの笑顔、リピーターがいることなどを伝えている。


 実際に歩いてみた。この中心市街地は国道45号に沿って広がっている。南北約700mの長さだ。目にした店をランダムに書き出してみる。

  魚屋、時計店、クリーニング店、理容室、スーパーマーケット、ガソリンスタンド、靴屋、酒屋、味処、クリスマスの飾りつけのある菓子店、薬局、精肉店、化粧品と食器を扱う店、電器店、田楽を焼いて提供している店…。
  さらに、普代タクシーがあり、郵便局があり、JA新いわて普代支所がある。

 人口は確かに少ない。でも、僕は悲しい気持ちには襲われなかった。それよりも、人口が少ないところでこんなにも多種多様な店があることにむしろ驚いた。
  きびしいことも多いだろうけれど、投げやりやあきらめを通りから感じることはなかった。人々は前を向いて日々を歩んでいる。心あたたまるふるさとの風景なのかもしれない。自然体でいられる心地良さがあった。



シリーズ中心市街地-その8***********************


 どこか懐かしさを感じる40分
  ― 軽米町中心市街地 散歩のススメ ―
                                          2018.12.20
 
 岩手県北部のイメージ 1県境に位置する軽米町(かるまいまち)。
 北は青森県八戸市、南部町(なんぶちょう)、階上町(はしかみちょう)に接している。自然豊かな丘陵地に囲まれた農林畜産業が盛んなまちで、毎年春には「雪谷川(ゆきやがわ)ダムフォレストパーク・軽米」の15万本のチューリップが咲き、観光客の目を楽しませている。
  
  軽米町の11月30日現在の人口は9,028人・3,778世帯、このまちも人口減少と高齢化が進んでいる。
 町勢要覧を見ると、昭和55年の人口は1万3,768人・高齢化率11.2%。平成27年に人口は1万人を割り9,333人に、高齢化率も36.4%になった。
 

 さて、軽米町の中心市街地。
  ”いいものいっぱいかるまい”とタイトルしてある「軽米町観光物産&ナビ」小冊子を高台にある軽米町役場でもらった。「このまちの中心市街地? 私たちは『まちなか』と言っていますけれど、それはまさにここ(役場)から東に広がるエリア」と職員。
  
  さっそく歩いてみる。4つの商店街があった。


 高台にある役場から10メートルほど下った十字路の左手(北方向)には「上新町(かみしんまち)商店街」がのびている。魚屋、理容室、LIQUR&FOODSの看板をだしている店、米屋などがあった。
 十字路までもどり、役場を背にまっすぐのびている通りに入る。ここは「大町(おおまち)商店街」だ。
  東西250mほどの通りの両側に数多くの店が軒を連ねている。まさに中心市街地と言うにふさわしい。電器店、郵便局、呉服店、水道・金物店、理容室、神仏具店、洋品店、ジュータン・カーテン・敷物の店、酒屋、岩手銀行、寝具店、文具店、陶器店、メガネ店、カフェ…。
 大町商店街のカフェを左手に見ながら交差点を右(南)に曲がり、「仲町(なかまち)商店街」(南北約200m)へと進む。交番、雑貨店、手作り豆腐・アイス・お菓子などを扱う店、薬局、みちのく銀行靴屋、時計店、そしてクリスマスイルミネーションで飾られた軽米町物産交流館があった。物産交流館では特産品や土産品を売っていた。
 
  仲町商店街を通って左(東)へ曲がる。東西約100mの「荒町(あらまち)商店街」には食品スーパーがあり、衣料品店があり、菓子店があり、製麺所があった。
 ~ いざ車をとめて、まちなかに繰り出しましょう。どこか懐かしさを感じる風景の商店街は、歩いて巡ると40分ほど。気軽にまちの人に話しかけて、土地の言葉や、あたたかい人柄にふれながら、ゆっくりまち歩きを楽しんで。(軽米町観光&物産ナビ)~ 
                  
                                                    *写真は大町商店街、役場を背に12月19日16時50分撮影


シリーズ中心市街地-その9*********************
 
  味わい深い一本道をまちあるき
  ― 葛巻町中心市街地 ―
                 2018.12.20
 

 北緯40度、岩手県東北部の高原地帯にある葛巻町(くずまきまち)は標高1000m級の山々に囲まれた酪農と林業のまち。
 イメージ 5 
  くずまき高原牧場でつくられている乳製品や地元産の山ぶどうを使ったくずまきワイン、大きな風車の風力発電施設などがあり、県内外に「ミルクとワインとクリーンエネルギーのまち」として知られている。

「町の最大の課題は人口減少です。観光をはじめさまざまな取組みに力を注ぎ、中心市街地にもっと人を呼び込み町を元気にしたい」と言うのは役場の観光担当・桂川(かつらかわ)いずみさん。

 葛巻町の現在人口は6,279人(平成30年4月1日。住民基本台帳)。ピーク時の昭和35年、1万6,000人ほどが暮らしていたこの町は、平成7年に9,536人と1万人を割り込んだ。人口減少の大きな波は葛巻にも押し寄せている。

 人口減少問題を克服するために町は産業振興や移住定住支援、地域資源を活かした特産品づくりや観光推進など、葛巻だからこそできる、葛巻にしかできない「地方創生」に挑戦し「全国の山村のモデルとなるまちづくり」をめざすとしている。ちなみに、観光客入込数は28年度50万1,095人、29年度52万1,110人など、年間50万人を超えている。

 葛巻町中心市街地は国道281号沿い、葛巻町役場から元町橋(もとまちばし)たもとの十字路までの約1.7キロの区間
  
  歩きながらメモした沿道の店舗をいくつか書き出してみる。
  呉服店、雑貨店、菓子店、電器店、葬儀店、小学校、生花店、写真店、歯科医、理容室、美容室、焼き鳥店、スーパー、クリーニング店、靴店、時計店、家具・建具店、喫茶店、化粧品店、盛岡信用金庫みちのく銀行岩手銀行、駐在所、JA、体育館、コンビニ、パチンコホール、酒店、食堂・・・。
 町の観光ガイドブックは通りの魅力を「昔ながらの味わい深い商店街が葛巻町のメインストリート。自動車社会ではなかった時代から続く店がいたるところにあり、今風のショッピングモールとはまったく違うふれあいが楽しめます」と訴えている。 

 *写真はストリートの中ほどにある「まちの駅くずまき」。バスターミナルの待合室に町内で採れた野菜などをあつかう産直が併設されている。



シリーズ中心市街地-その10**********************


 奥州街道だった道 いまも燦然と輝く
  二戸市中心市街地 ―
                           2018.12.22
 
  岩手県内陸部の北端、岩手のてっぺんに位置する二戸(にのへ)市。
  日本一の生産量を誇る漆(うしる)でつくる浄法寺漆イメージ 6(じょうほうじしっき)をはじめ、若鶏・短角牛・三元豚の食肉、りんご、さくらんぼ・ブルーベリーなどの果物、世界一の称号が与えられた地酒「南部美人」などがあるまち二戸。秀吉天下統一の総仕上げで戦った九戸政実(くのへまさざね)の居城・九戸城跡があり、座敷わらし伝説が残る金田一温泉(きんだいちおんせん)もある。


 さて、東北新幹線IGRいわて銀河鉄道などが乗り入れている二戸駅の東口を出て坂を数百メートル下ると、南北に流れる馬淵川(まべちがわ)に沿うようにはしる県道274号にぶつかる。
  ぶつかった交差点を南端として北に約3kmの範囲、つまり県道274号の南北3kmの範囲が二戸市中心市街地(メインストリート)だ。
  この地区の地名は「福岡」(ふくおか)という。北東北の年輩の人たちは二戸市のことを「福岡」と呼んだりするが、それは以前から福岡が栄えていたことを意味していると思われる。
 実際、このメインストリートはかつて「奥州街道」(おうしゅうかいどう)だったのだそうだ。奥州街道とは江戸時代の五街道のうちの一つで江戸・日本橋から北海道の函館まで続いた道。福岡から先、本州部分は津軽半島の先端、外ヶ浜町(そとがはままち)の三厩(みんまや)まで続いていた。「昔、福岡は宿場町として栄えていたと聞きました」と言う地元・二戸の人。
 
 ストリートを散策してみる。
 飲食店がある、つくり酒屋の南部美人が目に入る、居酒屋、洋服店、スポーツ店、花屋、美容室、理容室、岩手銀行みちのく銀行盛岡信用金庫。そして、二戸シティホテル、二戸パークホテル、ホテル村井、村田旅館‥‥‥などなど数々の店舗や会社、ホテル・旅館などがある。

 二戸市の現在人口は2万7,186人(平成30年10月末現)。
  
  似た人口規模の市に僕の住む岩手県久慈市がある。久慈市の人口は現在約3万5,000人。二戸市よりも8,000人ほど多い。
  これまで僕は2つの市の中心市街地の風景を見ていて、実際に何回も見ているのだけれども、「二戸は久慈よりも大きい。おそらく人口4万5,000人くらいだろうな」と思い込んでいた。このストリートに活気を感じていたからである。
 二戸は崖や坂などが多く平地になっているのは福岡のあたりだけだから商業集積しやすいんでしょうと謙遜する人、新幹線が通っているから元気なんでしょうと話してくれた人もいた。

 二戸市もほかと同様、人口減少の波から逃れてはいない。
   でも、このストリートはまちを代表する「顔」の役割を十分に果たしている、そう感じた。

 *写真は二戸市のメインストリート県道274号二戸一戸(いちのへ)線。
 
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