独自の文化を地域おこしに 平庭闘牛物語[1]

イメージ 1Bird’s- eye view
独自の文化を地域おこしに         
                           

平庭闘牛物語[全4回] ――――――――――――――
                       

 岩手県久慈市山形町は全国でも数少ない「闘牛大会」が開催されている地。今回から4回にわたって同地の平庭闘牛場で行なわれている闘牛、食としての牛、また牛にまつわる歴史などをレポートする。
 日本各地ではその地の文化を地域おこしのために活用すべく奮闘しているが、同地の「闘牛大会」はどのようなどのような思いをもって展開されているのか? 独自の文化を地域振興の資源としているケースの一つとしてお読みいただきたい。


イメージ 3
平庭闘牛物語【1】        2016.10.26
山形町は〝北限の闘牛の地″
         
 2016年10月16日、岩手県久慈市山形町の平庭闘牛場で「平庭闘牛大会もみじ場所」が開催され、岩手県内はもとより広島、石川、山梨、福島、北海道など全国各地から1,800人の観客を集めました。目を血走らせて角を突き合わせて巨体をぶつけ合う迫力ある数々の熱戦に会場は湧き立ち、戦い終わった牛たちに惜しみない拍手が送られました。
イメージ 2 なお、8月30日に久慈市を襲った台風10号は同地に大きな被害をもたらしましたが、新潟県長岡市と山古志闘牛会は久慈市と闘牛大会を主催する「いわて平庭高原闘牛会」に被災支援の義援金を手わたしました。ちなみに、長岡市の山古志地域は山形町と同じく闘牛文化をもった土地であることから山形町とのつながりも深いのです。


全身真っ白な「白龍」(日本短角種
子どもたちにも大人気です

全国9市町が闘牛大会を開催
~人口規模を集客した全国サミット~

 久慈市山形町と言えばNHK連続テレビ小説あまちゃんイメージ 4で一躍全国に躍り出た郷土料理「まめぶ」(=写真右)の里。しかし、同地の誇る文化はそれだけにとどまりません。いわて平庭高原闘牛会(松坂義雄会長、事務局・久慈市役所山形総合支所産業建設課)が主催する「平庭闘牛大会」が1年に3回(5月ころ開催されている若牛の練習会「わかば場所」を含めると1年に4回)開催されているのです。
 日本の闘牛はスペインの闘牛のように人と牛が闘うのではなく、牛と牛とが角を突き合わせて闘います。全国で闘牛大会が開催されているのは同地のほか、新潟県長岡市(山古志地域)、新潟県小千谷市愛媛県宇和島市、鹿児島県徳之島町、鹿児島県天城町、鹿イメージ 5児島県伊仙町、島根県隠岐の島町沖縄県うるま市、すなわち日本で9市町のみです。ちなみに八丈島(東京都)でも1988年まで行なわれていました。
 久慈市は海女が活動する日本最北の地であり「北限の海女」(写真左)のキャッチフレーズが有名ですが、同様に闘牛大会が行なわれる久慈市山形町も「北限の闘牛」の地と言えます。
 闘牛文化を継承している上記9市町の自治体と、いわて平庭高原闘牛会のような9つの地域の闘牛団体がメンバーになって闘牛文化の保存、振興、課題などについて意見交換する「全国闘牛サミット協議会」が1998年に立ち上げられ、以降、サミット総会が各市町持ち回りで開催されています。その際には地場の牛だけでなく各地の牛もゲストに招き闘牛を行なう「全国闘牛サミット」(=全国闘牛大会)も開催されます。
 全国闘牛サミット(=全国闘牛大会)はより多くの観客動員を期待できる集客資源になっていることは言うまでもありません。昨年5月には沖縄県うるま市で第18回全国闘牛サミットが開催されました。イメージ 6
 また、今年の6月12日には「第19回全国闘牛サミットin久慈大会」が久慈市山形町で盛大に開催されました。
 久慈市(山形町)で全国サミットが開催されるのは初めてではなく、久慈市に合併する以前の山形村時代も含めて今年で3回目となりました。
 7年ぶりに開催された今年6月の久慈大会には全国各地から約2,800人が来場、ちなみに山形町の人口は約2,800人ですから、人口と同規模の来場者を集めたことになります。平庭闘牛場は椅子のない芝生席にまで観客があふれました。
 地元の関係者で構成する大会の実行委員会では全国各地からくる来場者また関係者に「日本一のおもてなし」をするという目標を掲げ、心を込めた接客・対応を行なって好評でした。
 なお、6イメージ 7月11日には平庭闘牛場そばにある高原リゾート宿泊施設のセンターハウス平庭山荘で全国の関係者を集めた「前夜祭」が、また、12日の全国闘牛大会のあと久慈駅にほど近いホテルで全国サミット協議会の「総会」が開催され各地の闘牛大会また闘牛文化振興のための話し合いが行なわれました。
                            
 
                      *記事作成・宇部芳彦(久慈市地域おこし協力隊)