シリーズ移住定住-その7 負のスパイラルを断ち切れないか?

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シリーズ移住定住【その7】
負のスパイラルを
    断ち切れないか?

  ー 地方の人口減少を考えてみた
                                                           
                 2018.11.19



希望を見いだせない

 なぜ地方の人口は減少するのでしょうか。
 いまも昔も地域から若者がでていく理由はいたってシンプルです。「田舎で暮らしていくことに希望を見いだせない」からです。
 つい先日のことですが、三十代の友人が「結婚したいから都会へでてしばらく働いてこようと思う。お金が必要だから」と相談してきました。 
 この友人のように若い働き盛りの男性が、平成が終わろうとしている現在でも「出稼ぎをしなければ結婚できないかも」と不安をもつのが田舎の現実です。


生活費が安いというウソ

 ストレートに言います。地元ハローワークの求人票を見れば、東京とくらべると数万円から十数万円くらいの幅で月給が違っています。一部の企業だけではなくて、総じてほとんどの企業の給料は低いレベルにあります。これはひとり僕の田舎だけの問題ではないだろうと思います。
イメージ 2「給料が安いのはマーケット人口が少ないからで、儲けが少ないのだから仕方がない」と企業は言うでしょうし、その通りなのでしょう。
 別の角度から考えてみます。
 一般的に日本中どこの田舎の住民でも、地域外の人にはこう言います。「野菜なんかは近所の人が持ってきてくれるから、ここで暮らすのにほとんどお金はいらないよ」と。  
 でも、少し冷静に考えればそれはまったくの嘘だとわかります。携帯電話料金は田舎のほうが安いのでしょうか。また、田舎ではクルマがないと生きていけませんが都会ではクルマを持っていないことのほうが普通です。クルマ代はどうしますか、このごろはガソリンが高騰していますけれども?…
 子どもを学校に通わせるバス代などの交通費や下宿(アパート)代など教育関連コストは逆に田舎の人のほうが高くなると思うのですが?…



座して死を待つのか
  ~ やせ我慢で発展可能性へ ~ 
                                   
 結婚したいと言った友人が都会から戻らなかったり、お金が貯まらなかった場合、結婚できなくなるので子どもは生まれません。地元にいる若い人の多くが彼のような状況にあるならば、田舎の人口はこれから先も減っていく一方です。地元企業もマーケットがしぼんでいくのですから、いまよりさらに経営は苦しくなっていきます。イメージ 3
 理想にすぎる提案をしてみます。「すでにお前が言うようなことはギリギリまでやっている」と言う経営者がほとんどだろうと思います。そう言うであろうことをわかりつつも、あえて以下に試案を書き込んでみたいと思います。
 それは、少しだけ(かなりの痛みをともなうかもしれませんが)「やせ我慢」をして、従業員の給料をあと5000円だけでもいいからふやしてあげたらどうでしょうか?という提案です。給料がふえたぶんは地域で使ってもらえるように休日もふやしてあげます。
「前よりはラクに面白おかしく生きていけそうだ、都会ですり切れるより人間らしく暮らせるかもしれない」と、いったん出ていった人が故郷の状況を聞きつけてUターンしてくるかもしれません。そうなれば、お金が地域で回り、人が戻ってくることになるのでマーケットが拡大し地元企業が発展する‥‥そんな絵を描くことが可能になるかもしれません。
  繰り返しますが「現実を知らない人間の空論。勝手なことを言うな」と言われるだろうことは百も承知していますし、出すぎた発言だということも理解しています。
 でも、このまま何もしなければ地方の企業もそこで暮らす人たちも困り果ててしまうだろうと思います。「そんな考え方もあるんだな」と、一人ひとりがいま一度人口減少について考えてみるきっかけになればいいなと思ってこの試案を書いてみました。
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 いずれにしてもむずかしい問題です。人が減り、企業が元気を失い、そうなればまた人が減っていくというこの負のスパイラルを、何とか断ち切る方法はないのでしょうか。
 僕は地域おこし協力隊を卒業したいまでも継続してこれに対する答えをさがしています、地元の企業も元気に、住む人も元気に、そして僕も元気に生きていきたいから。


                             <文・写真/宇部芳彦>